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西澤諭志特集:ドキュメンタリーのハードコア(トークゲスト:金子遊)

詳細 DETAIL

写真家・西澤諭志は、分割撮影した風景をモニター上で結合し、その操作の痕跡で生じたずれを巧妙に残すことで、映像を制作する過程をひとつの画面に収める。映像作家・西澤諭志は、自宅、東京、台北、ハノイを舞台に、通例では画面のフレームやタイムラインから排除されるカメラの迷いや出演者の逡巡を内包しつつ、果敢に叙述を試みる。ドキュメンタリーという姿勢を通して、何をどこまで精確に記録し、提示できるのか。初上映の新作を含む三作の特集上映と、写真作品の展示

OPEN FACTORY企画

上映作品

『百光』(HD/2013年/72分)

監督自身が住む部屋を約一年にわたり動画で記録し、四つの章に分類した。
「布団」:同居人である恋人との関係性
「台所」:生活を取り巻く持ち物
「客人」:友人との会話から聞き取れる経済的・社会的な状況
「窓」:部屋の窓から見える風景の時間的な変化
複数の写真を頼りに一つの経験を想像するように、鑑賞者はこれら四章の映像から、見知らぬ部屋で一つの風景が生まれる過程に立ち会うことになる。

『与えろ/貰え/放っておけ(台北―東京) 2ch ver.』(HD/2014年/33分)

台北と東京、二都市のシェアハウスを舞台に撮影したビデオ作品。居間や台所といった、シェアハウスの一つ一つの部屋が舞台となり、登場人物たちはそこに置かれている家具や家電の来歴などを披歴していく。二つの都市で展開される会話や行動は、交互に、または並列に進行して、不意に干渉し同期したりしなかったりする。

『溝へ』(HD/2017年/44分)

ハノイ。ダンサーであるタインに、東京の演出家・羽鳥がインタビューをする。ヒップホップやコンテンポラリーダンスというジャンルを採用しつつ、ベトナム人としてのアイデンティティ表象を模索するタイン。東南アジアのアーティストたちが紋切り型の探求を口にすることに懐疑的な羽鳥は、別の方向性を示唆するような質問を試みる。その態度自体に欺瞞を感じながらも、お互いへの興味からダイアローグは続く。インタビュー場所はレストラン裏の駐輪場に移される。たむろする若者たちがスクーターにまたがり次々とフレームインしては去っていく。その場所に流れている都市の空気感が、次第にタインと羽鳥との対話を躍動させていく。その様子を映像は捉える。


トーク出演

西澤諭志(にしざわ・さとし)
写真家、映像作家。カメラを用いて個人の身近な生活を記録し、そこに否応無く浸食し写り込んでいく社会的、経済的な要因にまで目を向ける。主な展覧会に「西澤諭志展 ドキュメンタリーのハードコア」2011 SANAGI FINE ARTS(東京)、「空想する都市学」2014 TKG+(台北)など。写真新世紀2007、2008佳作入選。
http://satoshinishizawa.com/

金子遊(かねこ・ゆう)
映像作家、批評家。アジアの都市と風景に関心がある。著書に『辺境のフォークロア』『異境の文学』『映像の境域』。編著に『フィルムメーカーズ』『クリス・マルケル』『国境を超える現代ヨーロッパ映画250』『アピチャッポン・ウィーラセタクン』『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』など。慶應義塾大学非常勤講師、ドキュメンタリーマガジン「neoneo」編集委員。