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特集上映:第三回「11AM劇場 名画発見!」

12月21日(土)〜12月27日(金) 各日11:00より上映

写真:沖縄で元朝鮮人慰安婦のペ・ポンギさんを追ったドキュメンタリー『沖縄のハルモニ』より

日時

12月21日(土)〜12月27日(金) 各日11:00より上映

料金

一般¥1,800/シニア(60歳以上)¥1,200/ユース(19歳〜22歳)¥1,100/アンダー18(16歳〜18歳)¥1,000/ジュニア(15歳以下)¥800/UPLINK会員¥1,000(土日祝¥1,300)/UPLINKユース会員(22歳以下)いつでも¥1,000 【ご注意ください】本特集上映は水曜サービスデー適用外となります

詳細 DETAIL

アップリンク渋谷で異例のアンコール上映が続く『沖縄のハルモニ』の監督、山谷哲夫氏が自ら選出する“今、観るべき”記録映画。一週間に渡り、メディアでは紹介されることの少ない貴重な作品の数々が日替わりで連日午前11時より上映されるこの特集上映シリーズ「11AM劇場」。好評につき第三回の開催が決定!

12/21(土)、12/24(火)、12/26(木)『天皇の名のもとに』+『沖縄のハルモニ』

『天皇の名のもとに 南京大虐殺の真実』(1995年/50分) 監督:クリスティン・チョイ+ナンシー・トン

1937年、急速に南京を落城させた「皇」軍は、逃げ遅れた市民、とりわけ女性を乱暴に取り扱った。強姦し、証拠隠滅のため、殺した例が多かった。それを病院、街の中で正義感から「盗撮」していたのが米人牧師ジョン・マギーである。当時、米国は中立国で「人権」は「皇」軍によって保障されていた。でも、「盗撮」が見つかると、大問題になる。特に病院を出て、南京市内に入ると、画面は急に緊張感でピーンと張り詰める。この作品が中国側の単なるプロパガンダだったら、こんな衝撃を与えない。「皇」軍幹部は英米各紙の特派員によって報じられる強姦の多さに辟易していた。そこで、強姦予防策として「皇」軍兵士に与えられたのが「慰安所」である。南京事件は「慰安婦制度」を考える原点である。(山谷哲夫)

『沖縄のハルモニ』(1979年/86分) 監督:山谷哲夫

沖縄が本土復帰し、本島南部の砂糖キビ畑に囲まれた三畳の「掘っ立て小屋」に隠れ棲んでいた元朝鮮人慰安婦が発見された。栄養状態が悪く、たまに気分の良い時、ブツブツ訳のわからない言葉(朝鮮語?)を路上で叫んでいた。噂を聞いて、東京やソウルの有名な作家、大学教授が小屋へ入ろうとすると、鎌を振り上げ、面会拒否をする。とにかく、誰も寄せ付けなかった。しかし、ハルモニ(おばあさん)は「日本必勝」を固く信じていた「ゆきゆきて皇軍ハルモニ」だった…。出来て40年も経つボロボロの映画。アップリンク連続8回上映。そのたびに「満員御礼」が出る「ヘンな」映画。(山谷哲夫)

★各回上映後、山谷哲夫監督の挨拶あり


12/22(日)、12/27(金)幻の舞台劇『夜、あるいはなにものへかの注』。関係者宅で原板が発見され、42年ぶりの上映が実現。

『夜、あるいはなにものへかの注』(1977年/70分/白黒)監督:千秋健
撮影:中島亮 制作補助:宮崎政記 舞台・台本・演出:高野達也 美術・衣装:星埜恵子 照明:辻本晴彦

★上映後、高野達也さんの舞台挨拶あり


12/23(月)『光州蜂起』+『アイ(こども)たちの学校』


『光州蜂起』(1980年/27分) 監督:西田哲男+金慶植
『アイたちの学校』(2019年/99分) 監督:高賛侑

今年、在日朝鮮人たちが作った『アイたちの学校』は、地元関西では大反響を呼んだが、問題意識が薄い東京ではさっぱりだった。しかし、『光州蜂起』の共同監督西田哲男によって、渋谷で「敗者復活戦」を試みる。「100年の差別─その戦いの記録」がテーマで、朝鮮学校の歴史と現状を、内部から映し出している。「この世に差別される人間は一人もいません」─大阪朝鮮高級学校生徒の言葉が象徴しているように、ヘイトスピーチが日常的にがなり立てられる中、子供たちは黙々と学校に通う。圧巻は、民族学校校門前まで来て、拡声器で怒鳴りまくる右翼である。話には聞いていたが、関西はここまで歯止めがないのか? 東西温度差を痛感する。このヘイトスピーチを見るだけで、聞くだけで、『アイたちの学校』は一見の価値がある。併映の『光州蜂起』は、つい最近発見されたもので、惨たらしい市民蜂起を記録している、(山谷哲夫)

★上映後、西田哲男さんの舞台挨拶あり


12/25(水)『花はんめ』+新作『花はんめ、その後〜』

『花はんめ』(2004年/100分) 監督:金聖雄
『花はんめ、その後〜』(2019年/約15分) 監督:金聖雄

『花はんめ』は「ほっこり」した心暖まる映画。地味な作品だが、熱烈なファンが「11AM劇場」を動かした。新作「花はんめ、その後〜」は、あれから15年を経て川崎桜本がヘイトクライムに揺れる…。川崎市桜本1丁目。この街の小さな路地の小さなアパートのひと部屋に、花も恥じらう乙女たちが集まってきます。故郷は朝鮮半島にあるという在日一世で、人生も終盤かなあ、というはんめたち。はんめって〈韓国の方言で〉おばあちゃんのことです。遠く故郷を離れて、波乱万丈の年月を重ね、働けるまで働いて、ようやくちょっとは楽できるかなというはんめたちが主人公。5人も座ると満員の本当に小さなアパートの部屋ですが、“どうぞあがってくださいな”と勧められ、金聖雄監督は4年も通った。最初の頃、金監督のお母さんは亡くなられたばかりであった。撮影していく間に、金監督にある疑問が湧いてきた。(山谷哲夫)

★上映後、金聖雄監督の舞台挨拶あり 

「ワクワク、ドキドキ、ハラハラしなきゃあ、「11AM劇場」で見る映画ではない!(文:山谷哲夫)

 第三次「11AM劇場」はあえて、ワクワク、ドキドキ、ハラハラするものを、独断と偏見で選んでみた。

 21日初日から『天皇の名のもとに―南京大虐殺の真実』(95)を上映する。1937年、「皇」軍が中国の首都南京を急速に陥落させた後、混乱の中、市民虐殺、強姦を手当たり次第やった。それを当時駐在していた中立国・米国の牧師が正義感から「盗撮」したフイルムが中心になっている。写っているのは、ぼくらの父、叔父さんたちである。いったん、軍紀が緩めば、兵士は獣性を顕わにする。NHKが「刺激が強すぎる」と、放映を断わるのは当然な内容である。約2万人ほどの12~60歳の女性が惨たらしい被害者になったと伝えられている…。この強姦事件がきっかけとなり、「慰安所」制度が突如整えられた。強姦の代わりに、朝鮮人「慰安婦」が下賜されたのである。南京事件は「慰安婦」制度の原点である。内容が内容だから、何時、何所からか、嫌がらせやストップがかかるかわからない。上映するボクたちも何時もハラハラ、ドキドキしている…。

 『天皇の名のもとに』と併映するのが、『沖縄のハルモニ』(79)である。沖縄に生き残っていた朝鮮人慰安婦を2年かけて撮った古い、ボロボロの映画である。南部のサトウキビ畑に囲まれた3畳弱の掘立小屋に人を避けて棲んでいるハルモニ(おばあさん)は「上から目線」のインテリ女性が大嫌いだった。噂を聞きつけて会いに来る同胞の大学教授、作家等を面会拒否し、それでも粘る知識人を鎌を振り上げて追い払った。その中で唯一取材OKが出たのが、何故かボク(山谷)である。靴下に穴が開いている貧乏さが良かったと、漏らしている。でも、ハルモニは言いたいことを遠慮なく、広言する。「ええ、私は日本が勝つと思っていたんですよ」。この言葉をどうとらえればよいのか、山谷は動揺する。「美空ひばりを知らんとは、あんたは日本人か?」と問い詰められ、聞きかじりしていた「リンゴ追分」を歌詞を間違え、音痴の声で歌わされた。映画の客は大笑いで、何回も何回も見に来る常連客もできている。歌っている本人はドキドキ、ハラハラだが、客はこのシーンになると急にワクワクする。こんなボロボロの映画がアップリンクで9回も連続上映し、ほとんどが「満員御礼」が出るのは、ハルモニのしたたかさと、山谷の無様さ両方が映し出されるからだろう!

 第三次「11AM劇場」の目玉は、42年前に舞台公演され、大反響を起こした、生の精神病患者たちが演ずる記録映画『夜、あるいはなにものへかの注』を再映することだろう。たまたま、関係者宅に原版が残っていて、それを42年ぶりに見たボクが、腰が抜けんばかりに再度、衝撃を受け、関係者を説得して、公開にこぎつけた。奈落の底から這い出たような役者「大道夕子」が、白く塗りたくった顔で、意味が良くつかめないような「呪文」のようなセリフを独唱する。セリフはほとんど彼女だけが喋る。そして、洗面器の水に自分の顔が写っているのを見て、「私が笑っている。私が笑うなんて、そんなに私をいじめないで」と叫んで、また奈落へ落ちていく…。見た人は「大道夕子」に憑りつかれるだろう。ボクがその典型である。時たま、悪夢のように「大道夕子」が夢に出てくる。しかし、「大道夕子」はこれ一作だけで舞台から消えた。脚本、演出を担当した高野達也も天才的だが、でもその最大の功績は精神病患者「大道夕子」の役者としての天分を発見したことである。『夜、あるいはなにものへかの注』はゾクゾク、ハラハラ、そしてワクワク、すべてが隠されている。

(以下、12/8追記)

 まったく意図したころではなかったが、『花はんめ』の監督金聖雄が25日水曜日、新作『花はんめ、その後~」を特別に見せてくれる。『花はんめ』のモデルになった川崎市桜本で吹き荒れるヘイトクライムを撮ったものである。映画も人物も温厚でファンが多い人だが、よほど腹に据えかねることが桜本であったようだ。23日月曜日に上映する『アイ(こども)たちの学校』も、やはりヘイトスピーチがテーマになっている。関西では東京以上にヘイトクライムが過激になっているようだ。今回、たまたま『花はんめ、その後~』+『アイたちの学校』を上映することになったが、企画者のボクは偶然に驚いている。一体、どんな人がヘイトスピーチを大声で怒鳴るのだろうか? 同じ日本人として、「下品」だと思い、恥ずかしい…。

(以下、12/17追記)
 びっくりした、『沖縄のハルモニ』が今話題のベストセラー「反日種族主義-日韓危機の根源」(李栄薫編著 文芸春秋刊)にデカデカと取り上げられているではないか! 今まで『沖縄のハルモニ』は日本国内でさえ、金学順さんが「私は慰安婦だった」と告白して以来、慰安婦支持の過激な女性たちから無視されたり、酷い人は「汚らわしい」と汚いものに触るような態度を取られた来た。ハルモニが「日本に勝ってほしかった」と公言することが許せないらしい。でも、細々だが確実に多くの人たちー中には「暮らしの手帳」読者や「生活クラブ生協」会員の女性も多かったーに支えられ、40年間も見られ続けてきた。でも、それはあくまで日本国内でのことだった。それが韓国DMZ映画祭に招待されてから、一部だけだが、『沖縄のハルモニ』に刺激され、朝鮮人「慰安婦」の再検討が韓国で始まっている。その成果が「反日種族主義」である。でも大勢はあくまで日本大使館前に鎮座する「慰安婦像」のイメージで、未だに捉えている。米軍や日本軍兵士が撮った記録写真を自分の目で確認してほしい。そんな幼い「慰安婦」は限りなく0%に近い。「慰安婦像」は反日運動の切り札として、「偶像」化されたもので、事実は植民地朝鮮の「公娼」たちが騙されたり、親に身売りされたり、一儲けを企んで志願した「混成軍」が実態に近い。21日、24日、26日と3日間、ぼくが『ハルモニ』上映後、30分近くロビーで客の質問に答えるから、話したい人は残ってほしい。意外にこの出会いが、その人の運命を変えることがぼくの体験ではある。「慰安婦」、昭和天皇の戦争責任、それに進路相談(映像の仕事に就きたい人を斡旋する)等、山ほどの相談を受ける。受けているぼくも、久しぶりに映画学校の先生に戻ったようで、楽しみながらやっている。

 第三次「11AM劇場」は参加監督それぞれが懸命で、主だったトラブルはない。ただ、23日(月)『光州蜂起』+『アイ(こども)たちの学校』だけが、ダントツに伸びがなく、惨敗かな、と心配していた。これを企画した『光州蜂起』の共同監督西田哲男は、この50年間、友人、知人たちの運動のカンパ、署名等に自腹を切っていた。ぼくも彼のおかげで『みやこ』を沖縄で撮れ、英国留学を勝ち取れた。いわば大恩人である。だから、パソコンが苦手なところを手伝い、何とか23日を形にした。でも、友情と興行とは別物である。あまりにも数字が上がらないので、「今まで西田が尽くしてきた友人、知人、組合等に声掛けをし、23日月曜日に渋谷アップリンクまで来てくれるよう、泣いてでもお願いしろ」と忠告した。西田は早速、ぼくの忠告を実行したようだ。電話した12日以降、めきめき予約数が増え、17日現在7である。これからも、こまめに電話することで確実に数は伸びる。23日本番には、劇場側が要求する40人以上は超える可能性が高い。西田の最後の追い込みを信じよう。