子供の頃、夏になるとおばあちゃんが張ってくれた蚊帳。
マットレス布団を丸めて作ったトンネル。
ガールスカウトで使用した三角形のテント。
私はこれらの中に入ると、安心して落ち着きました。
目が隠れるほどずっぼりかぶったパーカーや、
ストールを頭に巻き付けたり、
雨の日に傘をさしたり、
眩しい時にサングラスをかけたり、
私はこの時、いつもより周りを気にしなくなり、緊張が和らぎます。
私は下着や洋服を身に着ければつけるほど、安心して人前に出られます。
だって、私の醜い体を隠せるから。
ウェディングドレスのべールは、
古代ギリシア・ローマ時代から邪悪なものから身を守るための魔除けであり。
挙式の際に、新郎が新婦のベールをたくし上げてキスをするのは、
この儀式によって二人の間の壁を取り払うという意味がある。
仮面やコスチュームを体に纏えば、他人からは自分がわからないということのみならず、
装着するマスクがかたどっている神・精霊・動物(実在架空を問わず)等、
そのものに人格が変化する(神格が宿る)とも信じられ、
古くから宗教的儀式・儀礼またはそれにおける舞踏や、
あるいは演劇などにおいて用いられてきた。
「覆うこと」は変身できる道具であり、術具にもなる。
今回の展示は、ポートレート形式シリーズの第一弾。
登場するモデルは私と馴染みがある人達。
私とモデルに関わりがある『覆う何か?』をコミュニケーションツールとして、
撮影場所・時間・制限などのルールに捕われず、
カメラマン・モデル・私で対話をしながら、即興で作り上げていきました。
出来上がった作品は、会場で直接ご覧ください。
KAIE
コンテンポラリーダンスのコスチュームやウェディングドレス。
今年は衣装をつくる機会に沢山恵まれました。
KAIEの衣装は、人が身につけることで、
動くオブジェとして様々な表情を見せてくれます。
また、同じ衣装を別の人が着ると違って見えてくる。
それらの要素が本当に面白くて、衣装作りに気合いが入りました。
野外ロックフェスでは、KAIEの作品 『リメイクティピ(インディアンテント)』も設置する機会があり、
搬出作業でティピの布を抱きかかえていたら、写真家 北原千恵美さんが興味を持ってくれ、
それに私も面白がって、布を頭に被ったり、体に巻き付けて被写体になりました。
その時の写真は、生っぽくて味のあるかっこいい仕上がり。
一目で気に入ってしまいました。
そのポートレートがこの一枚。
『服の形に仕立てなくても、体に覆うだけで衣装になる!!』
これが「覆うこと」シリーズを作り始めたきっかけでした。
KAIE