日時
5/4(土・祝)19:35開場/19:45開演
料金
一般¥2,000/会員¥1,800
5/4(土・祝)19:35開場/19:45開演
一般¥2,000/会員¥1,800
カンボジアの音楽を掘りはじめると一番最初に覚えることになる名前がある。シン・シーサモット。キング・オブ・クメールミュージックだ。
フランスの植民地であったカンボジアは東洋のパリと呼ばれ、早くから楽器と共にジャズやラテン、ポップス、R&Bが伝わった。その後、カンボジアはフランスからの独立を果たすが、今度はベトナム戦争によってアメリカ軍と共にロックンロールが入ってくる。シーサモットが活躍したのはこの時代だった。60年代、彼は世界中を席巻していたロックにカンボジアの伝統音楽を融合させ、後にクメールロック、クメール歌謡と称されるジャンルのオリジネーターとなる。
その頃、ここカンボジアでもタイと同じく親米軍事政権が誕生し、アメリカの傀儡ロン・ノル首相は、シーサモットをプロパガンダとして利用した。その後、反米勢力であったポル・ポト率いるクメールルージュは、それらすべてを西洋文明からの汚染源として破壊し、シーサモットをはじめ、多くの歌手や作曲家らの行方もそこで途切れ、その後を知るものは誰もいない。
「In The Life of Music」は、ポル・ポト時代とそれ以前、そして現在という3つの時代を、シーサモットの曲「バッタンバンに咲くプルメリア」という曲を軸に描いている。当時、タイ国境側の難民キャンプで生まれ、その後アメリカ渡った共同監督のひとり、ケイリー・ソー。そして同じく共同監督のヴィサル・ソックはフランスへと難を逃れた。
これまでタブーだったポル・ポト時代について、新しい世代である彼らがついに語りはじめたのだ。そして、そのきっかけは彼らの記憶に残る音楽から手繰り寄せられていく。(富田克也)
『音楽とともに生きて』(2018 年 / カンボジア / カラー /91 分 / クメール語・英語/日本語字幕)
監督:ヴィサル・ソック、ケイリー・ソー
キャスト:ヴァンダリス・ペム、スレイナン・チア、ソウナ・カニカ
字幕提供:東京国際映画祭
三ヵ月以上に及んだ「バンコクナイツ」の撮影。毎夜へとへとになりながら、明日のためのミーティングだと皆で一室に集まりただ呆けていると、録音マンであり、“現場DJ”でもあったYOUNG-Gがいつものように音楽を流し始める。
いつの夜だったか、毎夜繰り返し聴こえてくる甲高い女性の歌声に気づく。特徴的なキーボードのイントロ、懐メロとしか思えないギターのリフ。ルークトゥンか。いやモーラムのよう? いずれにせよ、タイ語かイサーン語だという見当で歌詞に耳を澄ます。が、ちょっと違う…いや大分違う?ん?何語だこれ?気づけば途中からラップも混じってきた!チョーかっこいいじゃん…。
「いやぁ、カンボジアのSreyleak(スレイリアック)っていう女性歌手らしいす」と説明するYOUNG-GのPC画面を思わず覗き込むと、「途中から入ったフィメールラッパーがLISHA(リーシャ)。それ以外はまったく謎っす。それにしてもこのPV、映画のシーンみたいじゃないっすか? なんなんすかねこの人たち?」と、YouTubeの画面を観ながらいう。
それにしても、堀士としてのYOUNG-Gのアンテナが、この段階で既にタイをはみ出ていたことに驚いたのはさておき、こうして私は彼らを知るに至った。それらの動画をYouTubeにUPしているアカウント名、“KlapYaHandz”とは一体なんなのか。私たちは、虜になってしまったスレイリアックやリーシャを筆頭に、“KlapYaHandz”アカウントがUPする動画を毎夜追い続け、どうやらその屋号はレーベル名であり、そして彼らは映画も作っているのだろうという予想を立てた。
「バンコクナイツ」の撮影現場でYoung-Gが一番多くかけ続けたのは、なぜかカンボジアの曲だった。あの強烈なタイ・ラオスでの撮影期間、ずっとテーマ曲であり続けたSreyleak(スレイリアック)の歌声―。
矢も楯もたまらずYOUNG-Gと私は、カンボジアの首都プノンペンに“KlapYaHandz”を訪ねていた。(富田克也)
『ラップ・イン・プノンペン』(2018年/日本/39分/デジタル)
監督:富田克也
出演:YOUNG-G、ヴィサル・ソック
提供:空族