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『サモンの娘』東京初上映&ゲスト作品スペシャル同時上映&トーク (ゲスト映像作家:出光真子、UMMMI. トークゲスト:金子遊)

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「本来フィクションであるはずだったものでも、長い間信じ続けると、いつしかそれが事実のように振る舞い、強制力を持ちはじめる──。『サモンの娘』ではそのようなことを描きたいと思っていた。今回の東京初上映では、いくつかの作品を同時上映しながら、運命のように迫ってくる物語に抗することや、映像表現と物語との関係などについて改めて考えてみたい。ゲストには、60年代終わりに8㎜を撮り始めて以降、家族神話や主婦の抑圧、女性の創造欲求などをテーマに独自の映像表現を切り開いてきた出光真子と、愛・ジェンダー・個人史・社会を主なテーマとして創作するUMMMI.の両氏。トークゲストには、映像作家であり実験映画/ヴィデオアートの研究者でもある金子遊氏を迎える」(『サモンの娘』監督・中村明子)

OPEN FACTORY企画

▼上映作品

『サモンの娘』(2015年 / 60分)

訳あって浪人となるも、武士としての誇りを忘れずに暮らすサモン。娘のイワもまた、父に従い武士の娘を立派に演じていた。2人を見つめる妹のソデは、外の世界を覗きつつ変化を待ち望んでいた。そんなある日、サモンが人けのない裏道で何者かに殺されてしまう。父の敵討ちを誓うイワ。しかし彼女の願いはなかなか叶わない。なぜなら彼女には、彼女の役目があるのだった……。

出演:ほたる、板倉光隆、柳東史、山下恵、下元史朗
監督・脚本・撮影・編集:中村明子/原作:鶴屋南北『東海道四谷怪談』/撮影:浜崎亮太、藤井加奈子/録音:阿久津毅/ヘアメイク:細谷知代/着付け:坂田直子(直や)/ケータリング:井澤里佐、小野寺広海/スチル:渋谷岳之/車両:槌谷育子/大道具および出演:芝山道男、佐高秀峰、美谷添洋一、澤井敏勝、澤井勝司、長縄和男、市村瑞穂/音楽:Big Blood、栗原梢(ピアノ)、西槇恵利(ヴァイオリン)、井出彩香(チェロ)


▼同時上映作品

『清子の場合』(1989年/24分20秒)監督:出光真子

主婦という役割におさまりきれないエネルギーを持った女を日常生活は凶器となって追いつめていく。自己表現の道を閉ざされた画家志望の女の悲痛な叫びを描いた傑作。1991年にモンディアルビデオ祭で最優秀実験作品賞、1992年にシモーヌ・ド・ボーボワール・フィルム&ビデオ祭で奨励賞を受賞した作品。

『UMMMI.のロンリーガール』(2016年 / 1分8秒)監督:UMMMI.

2016年に渋谷の街で生きる女の子が、ときおり失敗したり、ダメになったり、落ち込んだり、でもまた嬉しいことがあって、テンションが上がって、あの時の失敗や悲しみを忘れちゃう、みたいな心の揺れ動きについて考えた。孤独を感じていること、遊びすぎてしまうということなど、ある種ステレオタイプな若者像をもう一度内側から肯定するための作業でもある。渋谷に位置する実家から渋谷駅まで、酔っ払っている女の子を自らひたすら担いで送っていく様子をパフォーマンスの記録としてドキュメントした。プライベート⇄パブリック。

『永遠に関する悩み』(2015年 / 8分)監督:UMMMI.

この作品は、愛と自殺の関係性を探る、誰にも観られることのなかったホームヴィデオ、という形式で制作されている。ゲーテ『若きウェルテルの悩み』を軸にして語られる、私の両親に起こった出来事、そして彼らがゆったりと崩壊に近づいていく様子が、モノローグとして流れる。 そのモノローグが数ヶ月前に撮影した恋人の姉とその夫のホームヴィデオ(私の両親に見せる予定だったもの)に乗って、静かに語られる。あらゆることが同時多発的に起こっている中で、とりあえず一度立ち止まり、人とうまく関われないでいる人や、愛、そして人生といったものを全うできない人の味方に立ってみようという、『コミュニケーションの不可能性』への静かな応対。


出光真子(いでみつ・まこ)
1940年東京生まれ。早大文学部卒業後ニューヨークへ留学。その後画家サム・フランシスと結婚、カリフォルニアに移り住み2児の母となる。60年代終わりから8㎜フィルムを撮り始め、80年代以降はヴィデオ作品を中心に家族神話や女性の抑圧をテーマとした独自の映像表現を開拓していく。N.Y.近代美術館、カナダ国立ギャラリー、パリ・ポンピドゥー・センターなど国内外の美術館に作品が収蔵されている。著書に『ホワット・ア・うーまんめいど ―ある映像作家の自伝』(岩波書店)、『ホワイトエレファント』(風雲社)がある。

UMMMI.(うみ)
アーティスト / 映像作家。愛、ジェンダー、個人史と社会を主なテーマに、フィクションとノンフィクションを混ぜて作品制作をしている。過去に現代芸術振興財団CAF賞 美術手帖編集長 岩渕貞哉賞受賞(2016) イメージフォーラムフェスティバルヤングパースペクティブ入選(2016) MEC AWARD2016 佳作(2016) ポンピドゥーセンター公式映像フェスティバルオールピスト東京入選(2014) など。

金子遊(かねこ・ゆう)
映像作家、批評家。実験映像とヴィデオアートを研究する。著書に『辺境のフォークロア』『異境の文学』。編著・共編著に『フィルムメーカーズ』『クリス・マルケル』『国境を超える現代ヨーロッパ映画250』『アピチャッポン・ウィーラセタクン』『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』など。慶應義塾大学非常勤講師、ドキュメンタリーマガジン「neoneo」編集委員。

中村明子(なかむら・あきこ)
映像作家。1997年米サンフランシスコ芸術大学卒後、東京にて個人映像作品の制作を開始。アートスペースの運営や上映会の企画など多岐に活動しながら、主にヴィデオアートの文脈において国内外で発表を続ける。近年の上映はAsian Film & Video Art Forum(韓国)、Millennium Personal Cinema Series(アメリカ)、Pinapple Underground Film Festival(香港)等。長編作品は『サモンの娘』が初となる。