1987年アルゼンチン生まれのエドゥワルド・ウィリアムズは、南米、アフリカ、アジアやクルドのロジャヴァなど世界各地の民衆デモを、国や目的を超えた現代における共通現象として映し出す。インド系アメリカ人のバニ・コシュヌーディは、現代の難民とギリシャの詩人たちの言葉を交錯させ、かつてより文明の栄枯盛衰とともにあり続け、今なお私たちが直面している人間の移動というテーマに取り組む。
『アロンジ!』(2016年/37分)
Allons-y! | Eduardo Williams
監督:エドゥアルド・ウィリアムズ
エドゥアルド・ウィリアムズはこの作品を作るにあたり、街頭で抗議活動を行う世界各地の人々に協力してもらい、それぞれに趣旨の異なるさまざまなデモの映像を撮影してもらった。監督はそれらの映像をつないでいくことで、デモというものを、参加者おのおのの大義名分や国境を越え出ていく現象としてとらえていく。また製作にあたっては、アルゼンチンの俳優ナウェル・ペレス・ビスカヤーの協力を得た。
エドゥアルド・ウィリアムズ ( Eduardo Williams ; 1987- )
アルゼンチン出身の映画作家。ブエノスアイレスの映画大学校で学んだのち、フランス国立ル・フレノワ現代芸術スタジオに在籍。短編映像作品が注目される作家である。『ピューマが見えた』( Pude ver un puma ) は、2012年度カンヌ映画祭シネファウンデーション ( 映画学校生の製作した短編映画を対象とする部門 ) に入選。2013年には、『ずっと落ちてゆく?』( Que je tombe tout le temps ? ) が、カンヌ映画祭に並行して催される「監督週間」で上演された。2014年、マルセイユ国際ドキュメンタリー映画祭では『忘れてしまった』( J’ai oublié ) がグランプリに入賞。
TRANSIT (S) : OUR TRACES, OUR RUIN | Bani Khoshnoudi
監督:バニ・コシュヌーディ
「亡命者、難民、不法入国者、移住労働者。彼らを何という名で呼ぶかは大した問題ではない。肝心なのは、人間は地球上を移動する存在である、という歴史的事実だ。人間は、何千年も前から、さまざまな文明を形作り、破局に瀕し、時として崩壊に陥っては、そのたびに移動を繰り返してきた」
監督バニ・コシュヌーディは、人間が何千年も前から移動の痕跡を残してきたことを突き詰めてとらえつつ、今日の時代状況に沈潜し、問いかける。人間の移動に直面した社会にあっていかなる倫理が可能なのかと。
バニ・コシュヌーディ ( Bani Khoshnoudi ; 1977- )
イラン出身のアーティスト、映像作家。その製作活動を貫くのは、社会や歴史への問いだ。短編映像作品『トランジット』( Transit ) は、2004年に製作されたもので、ヨーロッパへ渡る移民たちの移動の足跡をたどっていく。
オールピストとは?
世界有数の美術館ポンピドゥー・センター(フランス・パリ)が主催する国際映像祭 “HORS PISTES”(フランス語で「道を外れる」の意)、その理念を継承するオールピスト東京は2011年より、自由な映像、アイディア、才能を発信し、映像を共有する新たな形を議論し、経験する場を提供しています。
テーマ:COMMOTION:コモーション~ざわめきの彼方に
COMMOTIONとは、〈ざわめき〉や〈動揺〉をあらわす英語・フランス語ですが、その本来の意味は〈ともに動くこと〉です。今まで見たことがないものや体験したことがないことと出会ったとき、私たちはそれに共振し、精神や身体の何かがともに動くのを感じます。コモーションは、私たちの内部からの、新しい発見や共感のあらわれといえるでしょう。HPT2016のテーマである「COMMOTION:コモーション~ざわめきの彼方に」は、思いがけない出会いから、日常の感覚を揺さぶり、私たちをかつてない世界へと突き動かしていくアートの魅力をあらわしています。
オールピスト東京2016 プログラム・ディレクター 河合政之
公式サイト www.horspistestokyo.com