『サクリファイス』のような世界の終末に直面した人々を、『不思議惑星キン・ザ・ザ』のような脱力感で描いた若手女性監督による現代ロシアコメディ。
本作では世界の終末というテーマの中で、家族や愛、コミュニティといった普遍的な人間関係を描いている。映画史において何度となく取り上げられてきたこの「終末もの」というテーマだが、これが長編処女作となるタイシャ・イグメンツェバは、重みや古さを感じさせない、軽快なコメディ作品に仕上げている。
それぞれに個性的な村人たちと、そして綿密に作り込まれた可愛いらしい美術や小道具で、コルホーズではない現代のロシアの農村を独特の世界観で作り上げているところも魅力の1つ。ちょっとダサいユーロビートに乗せて、ソ連でもない、ヨーロッパでもない、新しいロシアの農村像が生み出されている。
『Bite the Dust/バイツァ・ダスト』(ロシア/2013年/101分)
原題:Отдать концы
監督:タイシャ・イグメンツェバ
1989年生まれ。全ロシア映画大学卒業
2012年、在学中に”The Road To”で、カンヌ国際映画祭においてシネフォンダシヨン部門で第1位となる。アレクセイ・ウチーチェリの下で製作したBite the Dustで長編初監督。
脚本:Alexandra Golovina
撮影:Sasha Tananov
美術:Eldar Karkhalev
編集:Ekaterina Shakhunova
録音:Arkady Noskov
衣装:Nadezhda Vasilieva
プロデューサー:アレクセイ・ウチーチェリ、Kira Saksaganskaya
制作:Rock Films
【ストーリー】
ロシアの小さな農村では住民は誰もが顔見知り。ある日「コロナ大量放出」で人類が9割死滅するというニュースが村に入ってくる。信じる者、信じない者…それでも村人たちは「最後の日のパーティ」を開くことに。地球最後の日に向けて、お互いなんでも筒抜けだと思っていた村人たちの、今まで隠していた秘密や願いが次第に明かされてくる…