2012年夏、東京。約20万の人びとが、首相官邸前を埋めた。NYの「ウォール街占拠」の翌年、香港の「雨傘革命」の2年前のことだった。
しかしこの運動は、その全貌が報道されることも、世界に知られることもなかった。
人びとが集まったのは、福島第一原発事故後の、原発政策に抗議するためだった。事故前はまったく別々の立場にいた8人が、危機と変転を経て、やがて首相官邸前という一つの場につどう。彼らに唯一共通していた言葉は、「脱原発」と「民主主義の危機」だった──。
はたして、民主主義の再建は可能なのか。現代日本に実在した、希望の瞬間の歴史を記録。
スタッフ総勢2名、企画決定30分
「映画を作ろうじゃないか。監督と出資は俺で、撮影と編集は君だ」。そこから製作は始まった。
無償提供された自主撮影映像を編集
ネット上で探し当てた自主撮影映像を、撮影者の賛同と協力にもとづき多数使用。現場映像だけが持つ生の迫力。
世代・国籍・出身・地位、全てがちがう8人の体験
原発事故の恐怖、運動の台頭、首相との会談までの経緯を、元首相を含む8人のインタビューで構成。
「私は、この出来事を記録したいと思った。この映画の主役は、映っている人びとすべてだ。その人びとは、性別も世代も、地位も国籍も、出身地も志向もばらばらだ。そうした人びとが、一つの場につどう姿は、稀有のことであると同時に、力強く、美しいと思った。歴史家である私がいまやるべきことは、これを記録し、後世に残すことだと思った。」
── 小熊英二