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月刊 平野勝之(第十七回)原一男×平野勝之“自力出産。ものすごく強い女”特集

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原一男監督参戦!まさかの“自力出産”対決!

今回「月刊平野勝之」としては、初めて平野監督作以外をラインナップしました。やはり最初は、我が国のドキュメンタリストとしては偉大なる大大先輩、原一男さんの作品に、敬意を表する意味で登場していただきたくお願いしました。原さんの懐の深さに感謝です。日本で「自力出産」というものを、真っ正面からカメラで作品化したのは、おそらく(他に存在したらすみません)この2本だけかと思われます。対照的な2本ですが、女性という存在がいかに強いものか?というものが描写されていると思います。2本の間には約20年の隔たりがありますが、遠く呼応するかのような2本立てかと思います。
平野勝之


平野勝之君のこと
彼との出会いは、『愛の街角2丁目3番地』(1986年/8mm)が、ぴあフィルムフェスティバルに入選したときに、私も最終審査員をしていた。私は彼の作品を推さなかったが、選考のあと、喫茶店で彼と会って少し話をした。そんな“浅い因縁”だった。次に会ったのが、斎藤久志監督作品『いたいふたり』で、私は役者として出演したわけだが、彼はなんとカメラマンとして現場にいたのだ。
さらに時が過ぎて、昨年4月から私は、アテネフランセでnew「CINEMA塾」講座を開催したのだが、テーマは“セルフ・ドキュメンタリー”、その場に平野君をゲストとして招いたのである。初めて突っ込んだ話をした。今、そのときの様子を思い浮かべながらこの稿を書いているのだが、不思議な縁だったんだなあ、という気がしきりにする。『極私的エロス・恋歌1974』は、公開当時、“衝撃的な”という形容詞つきで世間に迎えられた。自力出産のシーン、しかも生まれてきたのが混血児、という事実もそうだが、主人公が私の“最初の奥さん”だった女性で、それを撮っているのが私であることから「私映画」と囃し立てられた。作品の中でセックスの場面がある。主人公と私が、いたしているのだが、画面には、喘いでいる女が映っている。カメラは私。つまり“元祖・ハメ撮り“と、森達也なんかは言ってるが、時間軸的にどうなんだろう?ホントに元祖なのかどうか?ま、ことの詮議はおいといて、この私の作品が後に、セルフ・ドキュメンタリーとして一大潮流を形作っていく先駆けになるわけだが、平野君は、AV界で、まさにセルフ・ドキュメンタリー“道”の魂=精神を継承し、まっしぐらに突き進んできたわけだ。という、気がついてみれば、彼と私は決して“浅い因縁”なんかではなく、“浅からぬ因縁”で結ばれていたというわけである。
アテネの講座での彼とのセッションが第1幕だとすれば、今回は、第2幕。さて、どんな展開になるやら? 楽しみではある。
原一男


■タイムテーブル

17:00開場/17:15上映『極私的エロス 恋歌1974』(98分)
10分休憩
19:10上映『ザ・タブー恋人たち』(90分)
10分休憩
20:50~22:00トーク


■上映作品

『極私的エロス・恋歌1974』(1974年/98分) ※DVD上映

監督・撮影:原一男
製作:小林佐智子
録音:久保田幸雄
編集:鍋島惇
音楽:加藤登紀子

【あらすじ】
「私にとって映画はコミュニケーションの方法」という原が、かつて一緒に暮らし子どもまでをなした女を追って沖縄へ行き、彼女が自力出産を行なうまでを捉えた作品。
「極私」の極致へと到達した未踏のドキュメンタリーとして、原一男の名を一躍知らしめた問題作。「生きることの原点を描ききった」「見る者を強烈にとらえてゆさぶり続ける恐ろしい映画」「真実を見ることの衝撃」などの絶賛を浴び、日本列島のいたる所で若者の強烈な支持を集めた。


『ザ・タブー 恋人たち 自力出産ドキュメント 新劇場版』(1994年/約90分/V&R PLANNING)

【解説】
1993年制作のウンゲロメルヘン「ザ・タブー 恋人たち」、1994年にその続編として制作され、自力出産の様子が撮影されるも、ビデオ倫理審査協会の審査拒否により発売禁止。本上映会にて数回しか発表されていない「ザ・タブー 恋人たち 自力出産ドキュメント」、今回はこの2本をミックス編集し、新たに劇場用として蘇ります。「劇場版」としては初公開。

「これは、2本で1本の物語になってしまいました。実はこの2本の関係は恐ろしいんです。1本目で苦し紛れに描いた、いいかげん極まりない虚構のお話が「自力出産~」で全て現実になっていくんですよ。こんな事ってある?って。「監督失格」にも通じる偶然。
この甲月季実子という女性は、社会的には間違ってるんだけど動物的には正しいんだと思う(笑)。あなたは社会的に正しい方か、動物的に正しい方、どちらを選びますか?そんないろんな事考えちゃいますよ。しかし、夫婦があまりにいいかげんすぎて、お産婆さんがサジ投げるって凄い話だよね(笑)原さんの確信犯的自力出産とは真逆でいいかげん極まりない、恐るべき出産の様子が描かれています。人は生まれる時は生まれるし、死ぬ時は死ぬんです。」(平野)


■ゲスト

原一男(映画監督)