アダルトビデオを通して社会を見つめ捉えた観察記録
これまで“過激”、“奇抜”、“ヌケない”AV作品としてサブカルチャー文脈で評価されてきたバクシーシ山下監督の特異な作品群は、映像に限らず様々なジャンルの表現者に少なからぬ影響を与えてきた。
本企画はバクシーシ山下作品を“過激”、“奇抜”、“抜けない”といった従来の文脈からではなく、その作品群に通底する“社会的”あるいは“人類学的”な側面にスポットを当てる。
冷めた眼で、眺めるように対象を見つめるバクシーシ山下の眼を通して、社会問題からマイノリティまで、私たちの身近にありながらも見ることのできない人々や世界を「社会科見学」する試み。
上映後のトークでは、多彩なゲストをお招きし、バクシーシ山下作品に残された、人々、時代の貌について、それぞれの観点から対話をおこなう。
第六回は、トークゲストにAV製作現場への参与観察から、AV女優の“自分語り”の構造を解き明かした『「AV女優」の社会学』(青土社)や、夜の世界に生きる人々の「クソみたいだけどキラキラした世界」を描いた『身体を売ったらサヨウナラ』(幻冬舎)などの著作でいま注目を集める社会学者、鈴木涼美をお招きし、職業と実存が二重写しにされる「AV女優」という不思議な存在と、あらわれては消えていくその儚い世界をバクシーシ山下と語る。
鈴木涼美(すずき・すずみ) プロフィール
1983年生まれ。慶応大在籍中の2004年にAVデビュー。東大大学院修了後、2009年に新聞社に入社、2014年秋に退社後フリーに。著書に『AV女優の社会学』『身体を売ったらサヨウナラ』。