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「ヒッチコック、そのイギリス時代」ロメール&シャブロル『ヒッチコック』刊行記念上映会

詳細 DETAIL

エリック・ロメール&クロード・シャブロルによる「ヒッチコック」の邦訳出版を記念し、ヒッチコックが監督したイギリス時代の傑作2作品を上映します。

ロメールとシャブロルの共著『ヒッチコック』(1957)が刊行されて以来、半世紀余り。商業的娯楽映画として貶められていたアメリカ時代のヒッチコックを敢然と擁護し尽くしたのが、ヌーヴェルヴァーグの二人による「作家主義」的戦略であったが、今となってはむしろイギリス時代の作品がマイナーなのかもしれない。であればこそ、今回はそのイギリス時代から傑作たる2作品を上映し、初期ヒッチコックを(再)発見する機会になればと願う。ヒッチをこよなく愛する榎戸耕史監督と『ヒッチコック』訳者2名によるトーク付き、さらに、サイレント作品は柳下美恵さんによる生ピアノ伴奏付き!(éditions azert)

【上映作品】


『マンクスマン』The Manxman(1929/83分)アメリカン・ヴァージョン

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:カール・ブリッソン(ピート)、マルカム・キーン(フィリップ)、アニー・オンドラ(ケイト)

知る人ぞ知る傑作であり、ロメールとシャブロルは、本作を『リング』と並ぶヒッチコックの最良のサイレント映画として挙げている。マン島を舞台に、漁師ピート・弁護士フィリップ・宿屋の娘ケイトの三角関係を描く。ケイトに求婚したピートは、財を成すまでのあいだ彼女の面倒を旧友フィリップに託す。ケイトはピートの帰りを誠実に待ち続けるが──。「これは目的に向かってまっすぐに進む映画である。ある名前が思い浮かぶとすればグリフィスである。(…)ヒッチコックがそれをメロドラマとして構想したのでも演出したのでもないことは明白である。逆に彼はメロドラマ的な不純物の内から、自分を魅了する道徳的な核を抽出することに専念した」。


『三十九夜』The 39 Steps(1935/83分)アメリカン・ヴァージョン

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ロナード・ドーナット(リチャード・ハネイ)、マデリン・キャロル(パメラ)、ゴッドフレー・タール(ジョーダン教授)

ロメール&シャブロルは、『殺人!』、『リッチ・アンド・ストレンジ』とともに本作をヒッチコックのイギリス時代の三本の最高傑作の一つに挙げている。追われつつ追う、というその後のヒッチを代表するパターンを確立した記念碑的作品である。主人公ハネイは、イギリス諜報部員である女性を偶然匿うが、彼女は謎の組織「三十九階段」に殺される。ハネイは殺人の濡れ衣を着せられ、警察に追われつつ、その過程で知り合ったヒロインとともに、「三十九階段」の陰謀を阻止し、その正体を明らかにしようとする。「この物語の中でヒッチコックを魅了したのは、それが非常に正確に、犯罪もののプロットを純粋なままに体現しているということだ」。

※作品紹介=木村建哉(引用はすべてロメール&シャブロル『ヒッチコック』から)
※全作品日本語字幕付きDVD上映

アルフレッド・ヒッチコック Alfred Joseph Hitchcock
1899年生まれ。サイレント映画のタイトル(字幕)デザイナーとして映画界に入る。以後、助監督や脚本の執筆を務め、25年、マイケル・バルコン製作による『快楽の園』で監督デビュー。以後、『三十九夜』(35)などのサスペンス映画で成功を収める。デヴィッド・O・セルズニックに招かれて、1940年に『レベッカ』でハリウッドに進出。同作はアカデミー賞最優秀作品賞を受賞した。その卓越した演出技法は後進の映画監督に大きな影響を与え、フランソワ・トリュフォーによるロング・インタビュー『映画術』も出版された。自作へのカメオ出演でも有名。1980年、腎不全のため死去。

【上映スケジュール】(各回15分前開場)


・18:00-上映「三十九夜」(83分)
+トーク:榎戸耕史(映画監督)、木村建哉(「ヒッチコック」翻訳者)、小河原あや(「ヒッチコック」翻訳者)
・20:45-上映「マンクスマン」(83分)※伴奏:柳下美恵(無声映画伴奏者)


【料金】


・上映「三十九夜」+トーク
料金:一般¥1,500/アテネ・フランセ文化センター・アップリンク会員¥1,300
・上映「マンクスマン」(ピアノ伴奏付き)
料金:一般¥1,800/アテネ・フランセ文化センター・アップリンク会員¥1,600
・2プログラム:一般¥2,800/アテネ・フランセ文化センター・アップリンク会員¥2,500

【出版情報】


エリック・ロメール&クロード・シャブロル
『ヒッチコック』

木村建哉・小河原あや=訳
インスクリプト、2015年1月10日発売、定価=2,800円+税
1957年フランス、二人の駆け出しの映画作家が、世界で初めてヒッチコックの全作品を徹底的に論じ上げた──。秘密と告白、運命と意志、悪の誘惑、堕罪と救済、そしてサスペンス。通俗的な娯楽映画という世評に抗し、ヒッチコックの華麗な演出に潜む形而上学的主題へと迫った、ヌーヴェルヴァーグによる「作家主義」の記念碑的書物。

■主催
アテネ・フランセ文化センター、渋谷アップリンク
■協力
éditions azert、アイ・ヴィー・シー