[上映予定作品]
1960年代からフィルムアニメーションや映画作品などを作り始める中嶋は70年代に入り、ポータブルヴィデオカメラを手にグループ〈ビデオアース東京〉を伴って、世界中の映像祭やアーティストと交流をはじめます。Vol.1では中嶋のフィルム←→ヴィデオを行き来し、作品を生き物として扱うような姿勢が伺える作品を上映します。
精造器 Seizoki(1964, 4min.)
草月ホールでの個展上映会において、フィルム上に直接ペイントされて制作した実験的アニメーション映画作品。
An experimental animation piece by direct paint on film, was produced between the solo screenings at Sougetsu Hall.
フィルムで撮影した素材をビデオに取り込み、画像処理されるという、70年代より更新されてきた作品。新しい技術が常に組み込まれ、成長してゆくこの作品は正に進化し続ける生命の循環をシミュレートする。
Nakajima captured filmed resources with video and process the imagery. This work always incorporating new technologies, and simulates the cycle of life that continues to evolve.
新幹線に炊飯ジャーを持ち込み、東京から名古屋までの間に炊飯し、到着と同時にプラットフォームで会食が催される。
Carrying in the rice cooker to the Shinkansen(express train), the group cooked rice between Tokyo and Nagoya. As the train arrives, they started to have a dinner party on the platform.
沖縄返還を記念して制作された作品。未来を象徴させる地母神のような女性像、母系社会の彼方を水平線に映し出し、沖縄返還時の不安・希望が入り混じる。
The symbolization of future with the female figure as it represents a god of motherland. It screened matrilineal society the horizon and shows both anxiety and hope at the time of Okinawa reversion.
母親の死と娘の誕生を2画面マルチで見せる。今回は70年代のテープに更に、孫の誕生や息子の入院などのその後の家族のライフ(生活/人生/命)が組み込まれた最新版を上映。
Original work shows Nakajima’s mother’s death and his daughter’s birth at the same time in the 2 screens.In this latest version, he put additional footage of his grand children’s birth, and his son being hospitalized.
上映後に中嶋 興×クリストフ・シャルル(メディアアーティスト)対談
中嶋興が道教の思想(木・火・土・金・水)を元に、日本、フランス、ニュージーランドなど様々な土地で制作されたシリーズを中心に一挙公開します。
写真とは何か What is photography?(1976, 抜粋10min.)
テーブルの上の裸婦に写真カメラを向ける集団にヴィデオカメラが介入する。被写体と撮影者が入り混じり、全員が裸体となって「映し/映し取られる」構造に巻き込まれる。
A group turns photo camera to the naked body, and video camera intervene. As it caught up, a subject and photographer intertwined, and soon the all people in the room will be naked.
写真家、斉藤庫山の撮りためた富士山の写真を元に構成された作品。化石燃料などのエネルギーで今日のメディア芸術が可能となる一方、富士山の永久凍土が温暖化により減少しつつあるという皮肉な側面を伺わす。
This work is fully based on the still images Fuji Mountain by photographer, Kozan Saito.We can face ironic aspect on today’s media art, and it’s resources. While human dig the all the energy out of the earth, global warming declines Mt.Fuji’s permafrost every year.
題名はフランス語で古代巨石文明の墓地の意。ブルターニュ地方カルナックに実在する古代ケルト人の遺跡を舞台に、ダンサー達が岩に文様を刻み込む様とモニターやオープンリールが重なり合うことで、記録メディアに負う現代を廃墟に見立てる。
“Dolmen” is an ancient megalithic cemetery in France. This work takes place in Carnac in Brittany region.
The remains of Celt of ancient Gaul as a stage; dancers inscribe the patterns on the rocks.
ニュージーランドはオークランド市街に面して浮かぶランギトート島は、数百年間の海底火山によって生まれた。溶岩の中に生まれた緑と、ニュージーランド先住民マオリ族の意思が、大自然を背景に飛翔してゆく。
Facing Auckland city of New Zealand, Rangitoto Island was born hundreds years ago by explosion of volcano under the sea. Green growing from inside the lava, and the thought of Maori, fly through in the background.
フランスの南仏のブルターニュ地方で制作された作品。人間にとって不可欠な塩だが、塩の砂漠地帯においては生物は死を待つのみ。物質の寛容さと残酷さの間に、水の記憶が物語られる。
Salt is essential for humans, but in the salt desert creatures are awaiting for their own death. Between the generosity and cruelty of the substance, there are story and memory of the water.
一人の男が陰陽五行の世界を遍歴してゆく。東日本大震災後に、被災地を訪れた中嶋と舞踏家・原田拓巳によるコラボレーション作品。
One man travels the world of yin and Yang. It was filmed after the great earthquake of Tohoku district at the stricken area.
Collaborative work with a dancer, Takumi Harada.
上映後に中嶋 興×上崎 千(慶應義塾大学アート・センター)対談
中嶋 興 Ko NAKAJIMA
1941年熊本生まれ。60年代より実験的なアニメーション、写真、デザインなどを手掛け、70年よりポータブルのヴィデオカメラを購入し、〈ビデオアース東京〉を結成。ヴィデオを個人の記録メディアとして、また生命や思想的な表現を行う媒体として捉え、ユニークな視点でパフォーマンスやドキュメンタリー、インスタレーションなど広い範囲での活動を国内外で行う。近年は仏クレルモンフェラン「Video Formes」で特集が組まれ、また『ランギトート』を制作したニュージーランドを再訪し、大規模なインスタレーション展示を行う。アーティストサイト
クリストフ・シャルル(Christophe CHARLES)
1964年生まれ。音楽家、日本のヴィデオアート研究者、武蔵野美術大学映像学科教授。音の独立性及び相互浸透を追究しながら内外空間を問わずコンサートを行う。CD作品に「undirected」シリーズ(Mille Plateaux, Subrosa など)、パブリックアート(常設サウンドインスタレーション):大阪住まい情報センター、成田国際空港第一ターミナル中央アトリウムなどを手掛ける。 アーティストサイト
上崎 千(Sen UESAKI)
1974年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学アート・センター所員。ポストモダニズム期における諸芸術のアーカイヴ的な在り方(芸術作品が アーカイヴを模倣すること)に関心がある。論考に「印刷物(印刷された問題 printed matter)——ロバート・スミッソンの眺望」『アイデア』(2007年1月)、「『記載の場所』を巡って——アーカイヴと横尾忠則」『ユリイカ』 (2012年11月)、「そして穴の底では、名残惜しそうに、墓掘人夫が鉗子を振るう」『ドキュメント——14の夕べ』(青幻舎、2013年)など。