長編であろうと短編であろうと問題は時間の長短ではなく、その時間の使い方である。時間の使い方次第で短編も、長編にはない濃度と密度で「娯楽」を盛り込めるマジカルな器に変形する。短編映画の「容量」は予想外に大きいらしい。短編映画は、ありったけの「娯楽」を詰め組んで大胆に飛躍する演出を可能にする、新しい映画フォーマットとして再創造されつつあるのだろうか。
①『純情No.1』(2011/20分/HDV)
主人公の女の見事な思い込みが、終始デタラメな展開を呼ぶコメディ。なのだろうか?大雑把に言ってしまえば、憎しみがつきぬけてやがて愛に変わるお話な気がするのだが、なんだか違う気もする。タイトルもデタラメなようで、確かにこれしかない気もする。ひょっとしたら大工原正樹に騙されているのかもしれない。ただひとつ言えるのは、主演の長宗我部陽子がデタラメでチャーミングでひたすら楽しい映画であるということだ。
②【新作】『恋の季節』(2013/9分/HD)
■監督・脚本:大工原正樹
■出演:二宮未來、松下仁、市沢真吾 /大迫茂生
映画美学校の実習で、撮影1日・予算5千円という条件のもとに撮られたショートムービー。『純情No.1』に続き、大工原が映画美学校の日常をほぼ忠実に再現した「映画美学校喜劇シリーズ」第2弾である。
③『INAZUMA 稲妻』(2005/30分/DV)
■監督:西山洋市
■脚本:片桐絵梨子
■出演:宮田亜紀、松蔭浩之、西山朱子、布川恵太
女優のセリは撮影中に相手役の加島が振るった真剣で顔を傷つけられた。セリは加島を怨み、復讐を考える。現代劇にアクション物とは違うコンセプトで「チャンバラ」を導入することで、男と女の愛憎のドラマを活劇として描こうとする試み。
大工原正樹:映画監督。1962年生。主な監督作品『未亡人誘惑下宿』『風俗の穴場』『のぞき屋稼業・恥辱の盗撮』『赤猫』『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』など。
ミニコラボとは、映画美学校初等科生をスタッフに、撮影1日、ノーライトで撮られた実習作品。予算わずか1万円で血と暴力と愛憎が渦巻くあまりにも強引な世界…。新作『炎の天使』は狂気の演劇集団を描くスペクタクル。予算はさらに下がって5000円!
※写真は新作『炎の天使』
①『おそらく悪魔が』(2009/9分/MiniDV)
出演:伊野紗紀、渡辺あい、田代正明、相良実和子
②『続・おそらく悪魔が』(2011/9分/MiniDV)
出演:きむらゆき、八幡みゆき、若栗有吾、東村論弥、鈴木英生、茂木俊幸
③【新作】『炎の天使』(2012/9分/HDV)
出演:きむらゆき、中川智明、小保方裕哉、野呂悠輔、杉原まり子、猪野浩晶
(2011/47分/HDV)
『女優霊』以来こだわり続けてきたバックステージを舞台に高橋洋が描く“真の人間ドラマ”。「20世紀には恐怖だったものがドラマに変わる瞬間!」(Phew)。
監督・脚本:高橋洋
出演:松本若菜、中原翔子、津田寛治、本間玲音、伊藤洋三郎
高橋洋・西山洋市・古澤健の3監督による短編映画製作&上映プロジェクト。これからの時代の新たな「娯楽映画」開発のために上映と対話を繰り広げている。通称「コラモン」は2012年5月、『旧支配者のキャロル』『kasanegafuti』『love machine』の三本立て公開から出発した。今後はテーマによってプログラムを様々に組み変えながら3作品の上映と他では聞けない映画トークを続行する。