かつて各地の祭りの場に忽然と現れ、おどろおどろしい絵看板と巧みなコマシで、不思議で怪しい、恐ろしくも珍しい、面白くももの悲しい別世界へと引きずり込んで、未知の感覚に目覚めさせたあの懐かしい世界。
飲んだ金魚を生きたまま釣って出す。口頭より火を噴く。両刃の剃刀を飲み込んで出す。飲んだ碁石を黒白分けて出す。瞼に紐付きボタンを挟んで繋いだ水入りバケツを振り回す…。想像を絶する芸で観客の視線をわしづかみにしてゆく。
この作品は、最後の肉体芸パフォーマーと呼ばれた、「人間ポンプ」こと安田里美さんとその一座9人の「秩父夜祭り」興行を内側から記録した作品である。
ここで生きる人々の芸と人生、その光と闇の世界をとらえた。