映画批評家の赤坂太輔氏が、「映画大国」アルゼンチンの映画史を掘り起こすシリーズ企画。第4回は、過去に「はみだした男」が日本でも公開されたウーゴ・サンチャゴ監督のスタイリッシュなノワールと、歌手、俳優としても名高いレオナルド・ファビオ監督による瑞々しいロマンスを上映します。
アカデミー賞や映画祭受賞作以外は日本に知られることはまるでないが、今世界で最も注目される国の一つ、アルゼンチンは伝統ある南米の映画大国である。ジョン・アルトンやグレッグ・トーランドの弟子たちによる光と影の撮影、ラロ・シフリンやガトー・バルビエリらを輩出したJazzyな音楽、時にボルヘスやコルタサルらも加わった文学的伝統を背景に持つ脚本……ヒューゴ・フレゴネーズからリサンドロ・アロンソまでを送り出したその歴史を見直してみると、軍政時代の暗い記憶やタンゴからくる一般的イメージを離れて、この映像的時代にダイレクトでリンクする同時代性を持った作品たちが見えてくる。このシリーズではそんなアルゼンチン映画の「陰の流れ」を追ってみる。
赤坂太輔(映画批評家)
12月15日(日)
17:30-「侵入」(120分)+講演:赤坂太輔(映画批評家)
21:00-「闘鶏師の恋」(60分)
※講演は「闘鶏師の恋」の回のみをご覧の方も空席があればご参加いただけます。
各回10分前開場
『侵入』(Invasión/1969年/120分)※デジタル上映
監督・脚本:ウーゴ・サンチャゴ
脚本:ホルヘ・ルイス・ボルヘス、アドルフォ・ビオイ=カサーレス
撮影:リカルド・アロノヴィッチ
出演:オルガ・スバリ、ラウタロ・ムルア
ある架空の街で、老人に率いられた組織が敵対する組織の侵入を阻止しようとしている。だが、次第に謀略と裏切りによって戦いの驚くべき全容が明らかになっていく。ボルヘスとビオイ=カサーレスの脚本参加で知られる、ジル・ドゥルーズやアラン・ロブ=グリエを魅了した伝説のアルゼンチン・ノワール。
闘鶏師の男が二人の女に出会う。純朴な女と奔放な女の間で揺れ動き、男は悲劇へと突き進んでいく。昨年他界したレオナルド・ファビオは、アルゼンチンを代表する俳優・歌手でもあった。名優フェデリコ・ルッピの代表作の一本とされる本作は、寡黙さと簡潔な演出でファビオの名作の一本とも評価されている。
※上映素材の状態が悪く、お見苦しい箇所がある場合がございます。予めご了承ください。
■主催
New Century New Cinema
アテネ・フランセ文化センター
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