2012年7月、日本最初の個人映画作家・高林陽一がこの世を去った。
高林陽一と聞いて『本陣殺人事件』や『蔵の中』などの横溝正史もののミステリー映画、あるいは『金閣寺』や『西陣心中』などのATG映画を思い起こす人も多いだろう。
だが、何といっても高林映画の醍醐味は、50年代後半に撮りはじめ、日本の個人映画の力量をはじめて世界に認めさせた、その前衛的で実験的な8ミリフィルムと16ミリフィルム作品に詰まっている。
来る日も来る日も、河原で石を運び続ける男の姿に人生の寓意をこめて、世界的な評価を受けた『石ッころ』(イタリア・モンテカティーニ・アマチュア国際映画祭金賞、イタリア・サレルノ国際映画祭銀賞)。無表情で虚空を見つめる石像たちとのモノローグの交感のなかに、作家にとって重要な「石」と「滅びの美学」が開示される、エッセイ映画の傑作『石が呼ぶ』など。
京都の西陣の精神風土に生まれ育ち、他の作家の追随を許さない、まったく独自の軌跡を描いた「高林陽一の宇宙」を探訪する。
<8ミリフィルム作品> ビデオ上映 約90分
『悲歌』(1959年/10分)
『石ッころ』(1960年/30分)
『さすらい』(1960年/22分)
『石が呼ぶ』(1961年/12分)
『ほくろのある風景』(1963年/8分)
<16ミリフィルム作品> フィルム上映
『むさしのいのち』(1965年/モノクロ/11分/ニュープリント)
※アフタートーク&シークレット上映あり!
高林陽一さんの盟友である飯村隆彦さん(映画作家)をゲストに迎え、トークショーをおこないます。飯村さんが自ら選んだ「シークレット作品」の上映もあります!
企画=幻視社(金子遊)