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『ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ』公開記念『LINE(ライン)』トーク付き上映会(ゲスト:小谷忠典、大澤一生、萩野亮)

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↑当日券あります!!↑

小谷忠典監督『LINE(ライン)』が一夜限りの復活上映!


現在イメージフォーラムにて好評公開中の小谷忠典監督作品『ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ』。フォトジェニックな映像とフィクショナルなアプローチで、既存のドキュメンタリー観にとらわれない作風が反響をよんでいる。
その原点ともいえる小谷監督の前作『LINE(ライン)』が、多くの方の要望を受け、一夜限りの上映決定!

監督自身が登場するセルフドキュメンタリーの体をとりつつも、外面と内面の「傷」を暗喩的なモチーフにしながら自己と他者のつながりを描いた『LINE(ライン)』。2010年に劇場公開され、静謐ながら強靭な語り口が観た者に強烈な印象を残した。ソフト化されておらず観る機会が少ない本作。この機会に是非ご覧ください!

※上映後トークショーあり!
ゲスト:小谷忠典監督、大澤一生(プロデューサー)、萩野亮(映画批評/「neoneo」編集主幹)

すべてはひとつの「線」となって繋がっていく

ヨーロッパの各映画祭で静かな熱狂を巻き起こした新世代ドキュメンタリー

波打つ水の波紋。自転車で走っていく後ろ姿。大阪府大正区。ここは沖縄からの移住者が多く住む街だ。
足の踏み場もないほど散らかった部屋で父と暮らす監督・小谷忠典の日常とその目に映ったものが綴られていく。酒に溺れる父と、血のつながりのない恋人の子どもとの日々の暮らしの中に言葉にならない苛立ちが積み重る。
苛立ちを抱えたまま、小谷は自らが住む街と深く結ばれる沖縄に向かった。そこで目にしたコザの娼婦たちの顔、体そして裸体。誰も見ることのない、彼女たちの体に刻まれた「傷と言葉」が一本の線となって、小谷と沖縄を繋いでいく。その線が向かう先はどこなのか?。
血と地を超えた「LINE」が親と子のつながりを紡いでいく。

全編を貫く「見つめる」というカメラアイの在り方は、決して他者との境界を踏み越えることはない。しかし、限りなく他者に近づき「見つめる」その距離が、次第に見つめ続ける時間そのものと共に融解していく過程の中で、その映像はドキュメンタリーに内在する「フィクション」をも飛び越え、ただ「映画」に昇華していく。それは同時に、一見繋がりそうにない父、恋人の子ども、コザの娼婦、傷痕を細い一本の線[LINE]で繋ぎとめ、「他者と向き合うこと」「関係すること」の本質を浮かび上がらせる飛翔でもあるのだ。

「家族」を題材にしながらも、かつてないアプローチがヨーロッパの各映画祭で賞賛を浴びた本作。大阪を拠点に『いいこ。』(05)等,インディペンデントで劇映画を中心に制作している監督・小谷忠典が、本作で初めてドキュメンタリーに挑戦。フィクションとノンフィクションの境界を自由に行き来する新鋭に要注目。

『LINE(ライン)』(2008年/日本/52分/スタンダード/カラー)
監督・撮影・編集:小谷忠典
製作:ソライロフィルム 配給:ノンデライコ


魚喃 キリコ(漫画家)
小谷監督からのお手紙で、わたしの漫画で肯定されてきた、とありましたが、この映画でわたしは肯定されました。
わたしの体にも心にもゆくてにも、いくつものLINEがあります、目に痛いくらいに鮮やかに血を流しながらで。
でも、これで、いいのですよね小谷さん。

石内 都写真家)
3人の男の危うい存在の関係がかすかな線を描き、沖縄の女達の純仕事の磁力を表出させた、小谷監督の真剣なまなざしが全編を貫く。見つめるという愛の行為と傷を負って生ざるをえない人間の悲哀と痛恨の物語だ。
血縁から他者へ、ドキュメントから想像へ、母なる沖縄を内包した切実たる映画である。

福間 健二(詩人 / 映画監督)
生きることも、表現することも、ここでは、いまをただ受け入れるのでも拒否するのでもない、必死の遠まわりだ。
写真に近づきながら、なおはげしく映画であり、世界の傷を見つめた先に、確かにつかまえているものがある。

石井 光太(ノンフィクション作家)
『LINE』を貫くのは沈黙である。
この作品は、登場する人間に何かを語らせるのではなく、彼らの身体に刻み込まれた「証」をひたすら映し続ける
ことで、その内部にある<世界>を示すものだ。真の人生というのは、言葉にすることができない。言葉にするのは、つらく、重く、苦しすぎる。
ではどうすればいいのか。体に刻み込まれた皺、傷、染みを見せるしかないのだ。
黙ってそれを見せつづけた時、言葉以上の何かが見る者の心を揺さぶる。
この映画を見た時、そのことを激しい衝撃とともに気付かされた。


『ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ』イメージフォーラムにて公開中!